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私はファザコン

韻世
小学1年生の時
大きな台風がきた

お家の方がお迎えにくるから
迎えに来た順に帰ってくださいね

我が家の母は病気がちなので迎えにこない
父は単身赴任で月に2回くらいの土曜日にしか帰ってこない
20才離れた兄もいるのだが迎えにはこない

先生 うちは誰もお迎えにこないと思うから
もう1人で帰ってもいいですか?

そして1人で帰ってたら
カッパを着て傘が壊れてるのに必死に傘をさそうとしながら
こっちに向かって歩いてる人がいる
平日だから父なはずはないが
あれは父だ

あれ?お父さんどうしたの?迎えにきたよ
ほらと傘を差し出し 受け取る

お父さんせっかく持ってきてくれた傘だけど
この風じゃ傘壊れるだけだよ
お父さんの傘も壊れてるし
いっそ濡れて帰ろうよ~
と提案して
それもそうだな と 笑いながら帰った

私はファザコン
ましてや平日にお迎えに来てくれるとは
とっても嬉しく楽しかった

ゆるい坂道だけど雨が川のように流れてたり
凄いね!って
母は父の悪口しか言わないし
お父さんは悪い人だから近寄ってはダメと
物心ついた時から言われていた

だから私が大人になるまで悪い人だと思っていた
だけど大好きだったので
単身赴任先へ行く?帰る?日の夜は
こっそり泣いていた
どこが悪い人なんだろう?と
悪い人でも大好きだった
お父さんごめんなさいと

だから台風のお迎えは二人の秘密みたいに
楽しくて今でも鮮明に覚えてる
お父さん大好き!